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2021.5.9

「お墓の引っ越し」はどうやってするの?

「お墓の引っ越し」はどうやってするの?

一般的に、火葬したあとの「お骨(焼骨)」をお墓に収蔵することを「納骨(のうこつ)」と言います。海外では「土葬」されることも珍しくありませんが、日本では99.9%が「火葬」による方法で行われています。そして火葬した後残ったお骨(焼骨)を拾うことを「拾骨(しゅうこつ)」と言います(※2)が、その拾ったお骨をどのように保管していくか(供養していくか)が問題となります。

骨壺(骨箱)に入れ、お仏壇等の近くにご自宅で保管すること(「手元供養」と呼ぶことがあります。)も禁止されていませんが、一般的には「墓地」の利用を申し込み、その「墓地」の使用権に基づいて「墓石」を建て、そこに保管することがまだまだ主流となっています(※3)。

なお、墓地は誰が運営・管理しているかによって、以下の①~③に分類することが可能です。

 

<墓地の管理者(運営者)による墓地の種類>

 ①寺院墓地…お寺さんの敷地内に存在する墓地です。

 ②公営墓地…市区町村等の地方公共団体や公的機関が運営する墓地です。

 ③私営墓地…地縁団体(町内会等)や民間企業が運営する墓地です。

 

このようにして先祖代々の立派な「お墓」があっても(新たに用意しても)、きちんと管理する人(墓地使用権の承継者)がいなくなってしまっては、結果的に「無縁仏」になってしまうことがあります。昨今では、このような事態を避け、「ご先祖様をきちんと供養していきたい」という想いから、「墓じまい」をする方が増えています。なお、「お墓じまい」は一般的な用語ですが、お墓を移転させることを「改葬(かいそう)」と呼び、法律によって行政手続きが必要とされています。

 

※1…「墓地、埋葬等に関する法律」の規定では「火葬」と「埋葬(土葬)」が認められ、船員法という法律で船上から行う「水葬」が認められています。

※2…「拾骨」することは義務ではないため、火葬場にて「拾骨しない」ことを希望することも出来ます。その場合は、「納骨」や「お墓」の問題は生じないこととなります。

※3…それぞれの信仰する宗教や宗派によって供養に関する考え方や方式は異なりますので、当該記載とは一致しない場合があります。異なる場合でもご容赦下さい。

 

 

「お墓じまい」に関する基礎知識

 まず「お墓」に関する基礎知識から解説致します。お墓については、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)」に様々な規定があります。この法律の第2条第3項にて、「「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。」と定義されており、同法第5条にて「埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。」と定められています。つまり、「墓じまい」をするには、墓地埋葬法の規定に従い、市区町村(保健所が管轄していることが多いです)への「改葬許可申請」が必要となります。具体的な手続き方法は「墓地埋葬法施行規則第2条」に規定されていますが、市区町村役場のHP等から申請書などが入手できます。

 

<墓地、埋葬等に関する法律施行規則>

(省略)

第二条 法第五条第一項 の規定により、市町村長の改葬の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、同条第二項 に規定する市町村長に提出しなければならない。

一 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名)

二 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)

三 埋葬又は火葬の場所

四 埋葬又は火葬の年月日

五 改葬の理由

六 改葬の場所

七 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係

2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)

二 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本

三 その他市町村長が特に必要と認める書類

(以下省略)

 

 

改葬許可申請の手続きの基本的な流れ

 

(1)お墓の移転先の確保

→まずは、移転先となるお墓の準備を行いましょう。最近では、「墓地」を持たず、利便性の高い都市部の「納骨堂」や「永代供養」も増えています。

 

(2)現在の墓地使用契約の確認

→今ある墓地(墓じまいをする墓地)の「使用契約」について、解約手続き上の制約がないかを確認をしましょう。墓地返還時の制約として多いのは、「撤去を行う工事業者の指定」及び「撤去費用に係る金額の指定」です。これらの規定がない場合は、墓石業者を自ら探したり、墓地の管理者から紹介してもらったりして選定を行います。

 

(3)墓石撤去業者の選定・見積もり取得

墓石の撤去業者を選定した後は、現地を確認してもらってから、墓石の撤去・処分及び原状回復に係る「見積書」を取得しましょう。口頭ではなく書面でもらっておくことが報酬トラブルを防ぐコツの1つです。また、撤去後に関する墓石の処分方法についても確認しておくようにしましょう。過去に、撤去後の墓石が山中に不法投棄されていた全国ニュースもありました。なんとも罰当たりですね。

 

(4)「改葬許可申請書」に、墓地管理者からの「埋蔵証明印」を取得する

→改葬許可申請書は墓地のある市区町村を管轄する保健所にてもらう又は市役所等のホームページから入手できます。申請書内に現在の墓地を管理する寺院等から、「証明」を頂く所があるので、現在の墓地管理者へ依頼して、記名押印をしてもらいます。なお、墓地管理者によっては、独立した「埋蔵証明書」を発行してくれる場合もあります。

   

(5)申請し、無事に「改葬許可証」が得られたら、「閉眼供養」を手配する。

→一般的には、いきなり撤去工事に入るのではなく、お付き合いのあるお寺さん等へ依頼して「閉眼供養(精抜き)」を行います。なお、墓石の撤去工事は閉眼供養と直後(同日)に行うことが多いですが、供養だけ先に済ませておくことも珍しくはありません。

 

(6)お骨を取り出し、新しい墓地へ納骨する(完了)

→墓石撤去工事の際に(※墓石を撤去することなく、お骨が取り出せる構造の墓地もあります。)、仏様のお骨を墓地から取り出します。この時に、「骨壺」に入っていない状態で土と混ざっている状態の場合も多く、場合によっては移転先がそのままの状態で受け入れてくれないケースもあります。どのような状態で納骨してもらえるのか、移転先へ事前に確認しておきましょう。

 

【参考条文】

墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)

第1章 総則

第1条 この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

第2条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。

2 この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。

3 この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。

5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。

6 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。

7 この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。

第2章 埋葬、火葬及び改葬

第3条 埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。

第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

第5条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。

2 前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。

第6条及び第7条 削除

第8条 市町村長が、第5条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。

2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。

(第3章以下省略)

コラム執筆者

野村 篤司
野村 篤司(のむら あつし)
大学在学中、19歳で行政書士試験に合格。大学卒業後は名古屋市内の大手司法書士法人へ新卒で入社、相続専門チームに配属され「専門相談員」として遺産整理業務に多数従事。4年2カ月の実務経験を経て、27歳7か月で「行政書士事務所エベレスト」として独立開業。2018年9月現在で累計相続手続き相談実績は単独で1000件を突破し、現在は「オンライン相続手続き相談ポータルサイト 相続シェルパ®」をリリース。以来、業務提携士業に対して「遺産整理ノウハウ」を全て提供しつつ、オンライン上で相続人らの悩みに解決し、その相談及び回答データを「ビックデータ」として「相続AI®」(チャットボット)の開発を行うリーガルテック事業へ挑戦中。その他、外国人に特化した有料職業紹介事業「エベレストキャリア™」や中小企業庁認定創業スクール「起業シェルパ®」運営などを展開。「エベレストグループ」として「税理士法人エベレスト」「社会保険労務士法人エベレスト」「司法書士法人エベレスト」を構え、「売上0(ゼロ)」からのスタート後3年でグループ年商1億円超を達成。趣味では登山サークルを自ら創設し、観光庁表彰「第2回若者旅行を応援する取り組み表彰」奨励賞受賞、NHK「クローズアップ現代」、「おはよう日本」、「にっぽん百名山」など多数メディア出演。

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