2023.4.12
2.相続人は誰か(法定相続人とは)
配偶者(※相続開始時点において法律婚を継続している場合のみ)がいる場合は、その配偶者は婚姻の長さに関係なく常に法定相続人となります。配偶者以外では、
「子(第1順位)」
↓
「直系尊属(第2順位)」
↓
「兄弟姉妹(第3順位)」
の優先順位で法定相続人が定められています。叔父や叔母は法定相続人にはなりませんので、ご注意下さい。
また、被相続人の死亡時において、子が既に死亡している場合に、その子の子である孫がいる場合は、その孫(やさらにその子)が代襲して相続人となります。これを「代襲相続」と言います。
兄弟姉妹(第3順位相続)の場合も代襲相続はあり、甥姪が相続人になることがあります。しかし、さらに甥姪が死亡している場合において、被相続人から見た「甥や姪の子」は、代襲相続ができない点に注意が必要です(第3順位では再代襲相続なし)。
<もっと詳しく!>
●はじめに
人が亡くなって相続が発生すると、亡くなられた方の財産をどうするか決めていくことになります。このとき、財産の分け方や処分方法については、その相続の権利をもつ相続人全員で決めなければなりません。
仮に遺言書があったとしても、相続人に黙って勝手に手続きを進めることはできません。[恭弘1] 人が亡くなったときは、亡くなられた方の相続人が誰なのかを確定する必要があるのです。
(参考条文 民法第1007条)
相続人が誰になるのかは法律に定められており、法で定められた相続人のことを『法定相続人』といいます。
では、法定相続人がどのように決まるのかを詳しく見ていきましょう。
●常に相続人になる「配偶者」
亡くなられた方(被相続人)の配偶者は婚姻期間に関わらず、常に相続人となります。
注意点:この時の配偶者は「法律婚」をしている配偶者に限られます。事実婚や内縁の状態では法定相続人としては認められないと過去の裁判で判断されています。
(参考条文 民法第890条、最高裁平成12年3月10日判決)
●第一順位「子」第二順位「親・祖父母(直系尊属)」第三順位「兄弟姉妹」
配偶者以外の相続人については順位が定められています。該当する相続人がいない場合は、順位に従って相続人が決まります。
・第一順位:子
被相続人に子供がいる場合は、その子が相続人となります。仮に、子供が先に死亡していたり、相続権を失った場合(相続欠格や廃除)には孫が相続人になります。次の世代に相続権が移っていく(代襲する)相続を代襲相続といいます。この代襲相続は、代襲できる者がいる限り続きます。
注意点:胎児の場合、相続においては既に生まれたものとみなされおり、民法上相続人となります。ただし、胎児が亡くなった状態で生まれた場合には相続人であることは適用されません。
(参考条文 民法第887条、第886条)
・第二順位:親・祖父母(直系尊属)
被相続人に第一順位の子供がいない場合、もしくは相続権を失って代襲できる者がいない場合には、第二順位の親が相続人となります。仮に、親が先に死亡していた場合は祖父母が相続人となります。
(参考条文 民法第889条第1項第1号)
・第三順位:兄弟姉妹
被相続人の親や祖父母が既に亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。仮に兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子(甥・姪)が代襲して相続人となります。
注意点:仮に甥姪が先に亡くなっていたとしても、代襲して甥姪の子が相続することはできません。
(参考条文 第889条第1項第2号、第2項、第887条第2項)
●相続欠格、廃除
・相続欠格
以下に該当する者は相続人の関係にあっても、相続人となることができません。
被相続人や、相続について先順位や同順位にある者を故意に死亡に至らせたり、至らせようとして刑に処せられた者
被相続人が殺害されたことを知っていて、言わなかった者。
詐欺や脅迫によって被相続人が遺言を書いたり、撤回、取り消し、変更することを妨げた者
詐欺や脅迫によって被相続人に遺言を書かせたり、撤回、取り消し、変更をさせた者
被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者
注意点:②については是非の弁識がない者(子供のような精神の発育が未熟である者)や、殺害者が自分の配偶者、子供や親など直系血族であるときは、殺害を知っていて言わなかったとしても、必ず相続欠格になるとは限りません。
(参考条文 民法第891条)
・廃除
被相続人が生きているうちに、被相続人自身で「自分が亡くなった時に、この人を相続人から外してくれ」という申立てができる制度です。
例えば、ある相続人が被相続人に対して虐待をしたり、侮辱を加えたり、またはある相続人に著しい非行があったときに、被相続人はその相続人を家庭裁判所に廃除してもらうように請求することができます。
注意点:廃除の対象となるのは遺留分を有する相続人です。遺留分とは遺された人の生活を保障する制度で、例えば遺言では財産が全くもらえない内容であっても、遺留分を請求すれば一定の割合で相続することができるという制度です。ただし、遺留分が認められているのは配偶者・子供(代襲相続人を含む)・直系尊属(親・祖父母)です。兄弟姉妹・甥姪には認められていません。
(参考条文 民法第892条、第1042条)
●相続人不存在
婚姻歴も無く、子供もおらず、親も亡くなっており、一人っ子で兄弟姉妹がいないなど、戸籍上相続人が存在しない場合があります。または、相続人が相続欠格や廃除に該当したり、相続放棄をした結果、相続人が存在しないこととなる場合もあります。これを相続人不存在といいます。
相続人不存在の場合、遺産は遺言書があれば遺言書に沿って手続きを進められますが、遺言書も無い場合は特別縁故者の申し立てにより審判で財産分与されます。特別縁故者とは事実婚や内縁関係にあった者など、特別な関係にあった者を指します。
前述では、法律婚をしている配偶者でないと相続人として認められないとしましたが、相続人不存在で、かつ遺言書がない場合であれば、事実婚や内縁関係にある者も遺産をもらうことができます。
最終的に特別縁故者にあたる者もいない場合には、国庫に帰属することになります。
(参考条文 民法第958条の3第1項、第959条)
●終わりに
相続が発生してから早いうちに相続人を確定しないと、金融機関手続きが進まなかったり、相続税の申告が必要かどうかの計算もできません。
しかし、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて内容を確認するのは、人によっては大変な作業となる場合があります。
専門家は戸籍を収集し、読むことに慣れているので、迅速に相続人を確定することができます。まずは戸籍の収集だけでもお早めに専門家にご依頼されると良いでしょう。