2023.4.13
5.相続を「したくない」場合の手続き方法
借金等の有無はさておき、なんらかの理由により、相続を「したくない」場合の手続きには、
①(法律上の)相続放棄
②(事実上の相続放棄とも呼ばれる)自己の取得分を0とする遺産分割協議(書への署名捺印)の実施
③相続分の(全部)譲渡
の3つの方法があります。このうち、対外的に「相続人たる地位」を消滅させる効果があるのは「①相続放棄」のみとなるため要注意です。
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ある人について相続が発生したときに、相続人となる方と、原則的な相続分の割合は法律で決められています。
しかし、財産を相続「したくない」場合、主に3つの手続きを選択し、財産を相続しないことができます。
(参考条文:民法887条、889条、890条、900条)
① 相続放棄の申述
全ての財産・債務を相続したくないという場合、相続放棄をすることができます。相続放棄は家庭裁判所に相続放棄の申述をし、受理してもらうことにより、効果が発生します。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになるため、対外的に相続人たる地位を消滅させる効果があります。
例えば、被相続人に多額の債務がある場合に、相続放棄の申述をすることにより、債務の承継を免れることができます。しかし、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続をすることができなくなりますので、相続したい財産がある場合には検討が必要です。
注意点:第一順位の法定相続人が全員相続放棄をした場合には第二順位の法定相続人に、第二順位の法定相続人が全員相続放棄をした場合には、第三順位の法定相続人へ相続権が移ります。
手続きの方法:家庭裁判所への申述
申述地 :被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
手続きの期限:自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内
手続き費用 :800円の収入印紙、連絡用の切手
必要な書類 :被相続人が死亡したことが分かる除籍謄本
申述人が相続人であることが分かる戸籍謄本
被相続人の住民票除票
② 自己の取得分を0とする遺産分割協議
遺産分割協議の中で、自己の取得分がない旨の遺産分割協議書へ署名捺印をすることにより、自己の取得分を0とする効果が発生します。家庭裁判所へ申述をする必要はなく、自身の意思表示(署名捺印)により、効果を発生させることができます。しかし、相続人としての地位はそのままであるため、相続人が持つ権利義務はそのままとなります。例えば、債務がある場合には債権者から請求されることがあるので注意が必要です。
手続きの方法:遺産分割協議への参加、遺産分割協議書への署名捺印
手続きの期限:特になし
③ 相続分の譲渡
法定相続分を譲渡することができます。譲渡は有償・無償を問いません。共同相続人はもちろん、第三者や法人へ相続分を譲渡することもできます。
相続分の譲渡は遺産分割の前にする必要があるため、手続きを簡易迅速に行うために使用される場合があります。
有償で譲渡する場合には、相続手続きをして遺産を手に入れるよりも早く対価が手に入るというメリットがあります。
遺産分割の前に、第三者へ相続分の譲渡が行われた場合、他の共同相続人は、その価格及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができます。譲り受けることができる期間は1か月以内です。
遺産分割協議をしたときと同様、債務がある場合には債権者から請求されることがあるので注意が必要です。
参考条文:民法905条
手続きの方法:相続分譲渡書面(証明書という形式をとります。)への署名捺印
手続きの期限:期限なし(遺産分割の前までに)
相続を「したくない」場合には期限がある手続きが必要な場合もあります。
期限を超過する前に、お早めに専門家へ相談するようにしましょう。