2023.4.13
8.預貯金等の有無や残高の調査方法
「預貯金があるかどうかわからない」場合の基本的な調査方法として、
各金融機関に「残高証明書の発行依頼」(ゆうちょ銀行の場合は貯金照会となります)を行う
方法があります。生命保険契約とは異なり、1か所への請求で存否調査が可能な制度は存在しない(少なくとも令和5年1月1日時点)
ため、少しでも可能性がある場合は調査対象に加えましょう。
また、各金融機関の「取引履歴」(※通帳にて十分に確認できる場合は原則請求不要)もあわせて請求することで、入出金状況についても確認が可能です。
他行への送金や他行から入金がないかどうかも確認しましょう。
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【故人の全財産の把握】
相続が発生し、いざ遺産を分割しようと思った時、その遺産がどこにどのくらいあるのか把握しなければなりません。ですが、証券会社や生命保険契約を除き、一か所への請求で取引の存否調査が可能な制度は存在しません。(令和5年1月31日現在)その為、少しでも可能性のある金融機関は一行ずつ調べていく必要があります。今回はその調査方法についてご説明します。
【預貯金の調査方法】
調査方法は大きく分けると二つあります。
(1)残高証明書の発行を依頼する
残高証明書とは、証明したい日付の口座残高について、「その金額で誤りがない」という事を金融機関が証明する書類です。
取引全ての発行を依頼した場合、当該金融機関での取引内容を網羅する事が出来る為、通帳だけではわからなかった事も判明する場合があります。
(例:出資金や投資信託、貸金庫等、預貯金以外の契約の有無等)
(2)取引履歴の発行を依頼する
取引履歴とは、過去の入出金の推移が記された書類です。期間を指定する事で、その範囲内における入出金先を把握する事が出来る為、金融機関名があれば
残高証明書を請求してみると口座を把握出来る場合があります。
注意点として、(1)はあくまで請求した金融機関の取引状況(一時期の残高のみ)を開示出来るだけである為、他行との取引状況は把握できません。
もしかしたら別の金融機関へ送金または入金している可能性もある為、その調査をしたい場合には(2)を請求する事をお勧めします。
【書類発行依頼書の記入・提出における留意点】
金融機関によって書類のフォーマットが異なりますが、一般的な様式としては冒頭に表示した画像の通りです。
各証明書の請求の段階では相続人全員の戸籍の提出は必要ありませんが、亡くなった方の除籍謄本(亡くなっている事の証明)や請求者となる
相続人代表の現在戸籍(本人確認書類)は必要となります。また金融機関によっては、相続人代表者の実印と印鑑証明書の提出が必要となる場合
もあります。必要書類は金融機関によって異なるので提出前に必ず確認しましょう。
【ゆうちょ銀行は少し特殊?】
ゆうちょ銀行には「現存調査」という、調査対象者の名義で開設している口座の有無を無料で調査を行ってもらえるサービスがあります。
「貯金等照会書」を提出する事で、貯金の種目・口座番号・当該年月日の残高が記載された調査結果の用紙を発行してもらえます。
定期郵便貯金を持っていなかった場合は、既経過利子額の証明請求も不要となる為、この貯金等照会書で全て事足りるでしょう。
ただし、申込日から過去10年以上前の日付を証明年月日とする現存調査は出来ませんのでご注意ください。
【相続税の申告が必要な場合に備えて】
相続税の財産評価通達には、預貯金の評価について以下のように記載されています。
「預貯金の価額は、課税時期における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額
(以下「既経過利子の額」という。)から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によって評価する。
ただし、定期預金、定期郵便貯金および定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の
預入高によって評価する。(昭55直評20外改正)」
(参考:財産評価通達 第6節その他の財産203)
仮に現時点で把握している財産総額が、申告を必要とする額に達するかどうか不明な方や、あと少し額が増えると申告が必要になるかもしれない、
という方は「経過利息証明書」を取得すると安心かもしれません。経過利息証明書は残高証明書や取引履歴と同じように、発行依頼書を提出する事で取得する事が可能です。
ただし、上記通達では「定期預金、定期郵便貯金および定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の預入高
によって評価する。」とある為、普通預金等に関しては取得不要となるケースもあるので注意しましょう。
【証券会社は一括で調べる事が出来る!】
前述の通り、証券会社に関しては「証券保管振替機構」という専門機関に依頼する事で、亡くなった方がどの証券会社に口座を開設していたのかを調査してもらえます。
●登録済加入者情報の開示請求
必要書類を提出後、2~3週間ほどで「登録済加入者情報通知書」が発行されます。
注意点として、通知書からわかる事は加入者口座コードと口座を開設している口座管理機関の名称のみなので、支店名や取引の内容まではわかりません。
その為、亡くなった方が最後に住んでいた地域を中心に、当該地域に存在している支店への問い合わせを地道に行っていくしかありません。
ほとんどの金融機関の営業時間は平日9時から15時までの為、平日に時間を確保出来る方でないと調査は難しいでしょう。
今回ご紹介した書類は、提出必要書類が揃っていれば代理人から請求する事も可能です。
時間の確保が難しい方は、一度専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。