2023.4.13
10.遺言書の有無の調査方法
「遺言書があるかどうかわからない」場合の基本的な調査方法として、
「公正証書遺言」の有無の調査については、公証役場における「遺言検索制度」があります。
この制度を利用することで、平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言であれば、全国規模で調査が可能です。
一方、「自筆証書遺言」の有無の調査については、遺言保管所(法務局)に対して「遺言書保管事実証明書の交付の請求」を行うことで、有無調査が可能です。
但し、自筆証書遺言を作成しても、必ず遺言保管所で保管されるわけではないため、居宅内や貸金庫等の中を探すことも大切です。
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ある人がお亡くなりになると、相続が開始します。民法では法定相続分が定められていますので、それに従って、遺産を分割することになります。
しかし、お亡くなりになる前に、遺言によって財産を取得承継する人を指定することができます。遺言書は遺言者の最後の意思表示ができる場所として、
尊重されるべきものとされているため、遺言書の有無は相続手続きを開始する前に、最初に調査すべき事項と言えるでしょう。
遺言書の作成方法は主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。
公正証書遺言
公証役場にて公証人の面前で証人2人以上の前で口授して作成された遺言のことです。原本は公証役場で厳重に保管されるため、偽造、紛失の恐れがありません。
そして、作成時には公証人が適切な方式で作成をするため、無効になる可能性が少ないです。
(参考条文:民法第969条)
自筆証書遺言
遺言者が自筆で書いた遺言のことです。保管場所は遺言保管所として規定されている法務局や、遺言者の自宅、貸金庫などが想定されます。
法務局で保管をされている場合には、偽造、紛失の恐れはありません。しかし、保管申請をする際に、適切な形式で遺言書を書かれているかどうかは確認されておりません。
(参考条文:民法第968条)
(1)公正証書遺言の調査
平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言については、電子化が進んでおり、「検索」をすることにより、全国規模での調査が可能です。
●手続きができる人:相続人、相続人から委任を受けた代理人
●必要な書類 :遺言者の死亡が分かる戸籍謄本
手続きを行う人が相続人であることが確認できる戸籍謄本
本人確認書類(印鑑証明書及び実印等)
代理人の場合は委任状等
●手続きを行う場所:最寄りの公証役場(平成元年以降のものであれば全国どこでも検索可能)
●手数料 :無料
(2)遺言保管所(法務局)に保管されている自筆証書遺言の調査
令和2年7月10日から開始された、「自筆証書遺言の保管制度」によって法務局へ自筆証書遺言の保管をすることができるようになりました。
遺言書を保管している場合には遺言書保管事実証明書の請求をすることにより、遺言保管所(法務局)へ保管されている遺言があるかどうか、調査をすることができます。
●手続きができる人:相続人等
●必要な書類 :遺言者の死亡の事実が分かる除籍謄本又は住民票の写し
請求人が相続人であることが分かる戸籍謄本
請求人の住民票の写し
遺言書保管事実証明書交付請求書
請求人の本人確認書類(顔つきの身分証明書)
●手数料 :800円
●請求先 :全国の遺言書保管所(法務局)
●請求方法 :窓口又は郵送
※詳しくはお近くの法務局のホームページをご覧ください。
※遺言検認の手続きについて
自筆証書遺言については遺言書の検認手続きをする必要があります(※例外として、法務局に保管されている遺言書については、検認の手続きを経ることを要しません。)。
遺言書を発見した相続人は遅滞なく遺言書を家庭裁判所へ提出をし、検認をすることになります。
そのときに、遺言書に封印がある場合には封印は家庭裁判所にて開封する必要があります。
検認を怠ったとき、封印を家庭裁判所外で開封したときには、過料が課されるため、注意が必要です。
遺言書検認手続きは遺言の執行前に遺言書の形式、その他の状態を確定し、その現状を明確にするものであり、また、その偽造変造を予防し、
遺言書について後日争いが生じた場合に、有力な資料を提供するためのものです。
(参考条文:民法1004条、1005条)
●手続きができる人:遺言保管者、遺言を発見した相続人
●必要な書類 :遺言者の出生から死亡までの除籍謄本
相続人全員の戸籍謄本
遺言者の住民票の除票の写し
申立書
●手数料 :800円、その他郵送費用
●申立場所 :遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
本記事記載の通り、「遺言書の形式」により、調査方法や、必要な手続き方法が異なり、手続きが滞ると相続手続き全体が遅延する恐れもあります。
そのため、できるだけお早めに専門家へ相談するようにしましょう。