2023.4.13
12.葬儀代の費用負担者について
葬儀代の費用負担者については、相続開始後に契約し、発生する支払債務であることから、葬儀契約の契約者たる「喪主」の費用負担とされています。
もっとも、複数いる相続人の全員で遺産分割協議を実施する場合において、その協議内で、全員の負担(頭数又は法定相続分で按分負担する方法等)と
合意することは差し支えありません。
なお、相続税を計算するときは、一定の相続人および包括受遺者が負担した「葬式費用」を遺産総額から差し引くことが可能です。
<もっと詳しく!>
葬儀費用は相続財産から当然に支払うことができない!
相続では、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産である「債務」も相続人に引き継がれます。
相続人に引き継がれる「債務」は、相続開始「以前」に存在している被相続人の「債務」のことを指します。
ところで、葬儀は、被相続人が亡くなった後に行われるものなので、基本的に、葬儀費用は相続開始「後」に生じる「債務」です。
葬儀費用の「債務」が生じた時には、被相続人はすでに死亡しているため、相続人に引き継がれる「債務」ということはできません。
よって、相続財産とは別のもので、相続財産から当然に支払うことができるというものではありません。
1.葬儀費用の負担者の考え方
では、誰が葬儀費用するのでしょうか。
葬儀費用を誰が負担すべきかについては、地域や親族間の慣習、形式的・実質的喪主の存在等を考慮して判断することとなります。
ただ、過去の裁判例で多い傾向の見解としては、以下の2つがあります。
① 相続人又は相続財産の負担とする見解
法定相続人は、被相続人名義の借金などの他の「相続債務」と同様に、法定相続分に従って当然に分割される葬儀費用を負担することになります。
この見解では、葬儀費用は被相続人の死亡に伴って社会通念上必要とされる費用であることから、相続財産から負担すべきとしています。
すでに葬祭業者などに対する支払いが済んでいる場合には、支払いをした者が立替払いをしたこととなり、各相続人に対して、その負担割合に応じて支払うように請求をすることができます。
② 喪主の負担とする見解
原則として喪主、実質的に葬式を主宰した者が負担することになります。
この見解では、葬儀費用は「相続債務」ではないこと、葬儀を実施するのが相続人であるとは限らないこと、通夜や告別式にどれくらいの費用をかけて
行うかは喪主の責任で決める事柄である以上は喪主が費用を負担すべきとしています。
葬儀費用が相続開始後に生じた「債務」であること、被相続人の「債務」ではないことから、最近では【②喪主の負担とする見解】が有力になってきています。
しかし、どんな場合でも葬儀費用を相続財産から支払っていけない、相続人が葬儀費用を負担してはいけない、というわけではなく、相続人の合意によって調整することは認められています。
なぜなら、遺産分割は相続人の協議によるものであり、話し合いによって自由に財産を分けることができるからです。
したがって、相続人の話し合いで相続財産から葬儀費用を支払って、残った財産を相続人で分けるということにしても、問題はありません。
2.相続税計算上の処理
相続税計算上のはなしですが、被相続人が亡くなった場合、社会通念上、葬儀を行うことは当然のこととされています。
したがって、亡くなった人の葬儀で通常発生してくる費用は、必要なお金として、相続または遺贈によって財産を取得した人、
一定の相続人および包括受遺者が負担した葬式費用を相続財産から控除することができます。
※注意点※
相続財産から葬儀費用を引くのであって、相続税の金額から引くわけではありません。
また、葬儀には様々な費用がかかる中で、そのすべてが葬儀費用として控除できるわけではありません。
何が相続税法上、葬儀費用となり控除できるのか、何が葬儀費用とはならないのかの判断が重要となります。
【葬儀費用等のうち相続税計算上相続債務として控除可能となるものの例】
①医師の死亡診断書
②お通夜・告別式など葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用
③葬儀場までの交通費
④お通夜や告別式で参列者の方たちに出す食事代、それ以外の弔問客に出す菓子代や飲み物代など葬儀に関する飲食代
⑤遺体の捜索にかかった費用や遺体の搬送のための霊柩車や寝台車にかかる費用
⑥火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
⑦香典などの受付をしてくれた人への心付け
⑧霊柩車やマイクロバスなど火葬場の往復の運転などをしてくれた運転手さんへの心付け
⑨お布施、読経料、戒名料などのお礼をした費用
⑩納骨費用
⑪そのほか通常葬式に伴う費用
【葬式費用に含まれないものの例】
①香典返しのためにかかった費用
②生花、お供え
③位牌、仏壇の購入費用
④墓地、墓石の購入費用・墓地の借入料
⑤遺墓石の彫刻料
⑥法事(初七日、四十九日)
⑦医学上または裁判上の特別の処置に要した費用
⑧そのほか通常葬式に伴わない費用
葬式費用に含まれないものは、人が亡くなった時に必要な費用ではあるが、葬儀には不要、関係がないということで控除することができません。
(参考条文:相続税法第13条、相続税法基本通達 13-4、相続税法基本通達 13-5)
3.最後に 親族間でトラブルにならないためにも
葬儀費用は、亡くなられてから数日中に多額の現金での支払いが必要となります。高額な出費を他の相続人に相談することなく、喪主などが相続財産から
葬儀費用を支払ってしまうと、後の遺産分割で問題とされ、親族間でトラブルとなり、相続手続きが円滑に進まなくなる可能性があります。
相続人できちんと話し合い、納得する形で負担できるよう、早めに専門家に相談するようにしましょう。